約 1,541,044 件
https://w.atwiki.jp/produce/pages/6.html
東浩紀『弱いつながり』概略 ネットは見たい情報しか目に入らないので、自由にはしてくれない。なら、リアルな身体を変えるしかありません。あなたは、環境の産物だからです。多くの人は、「自分が求めること」と「環境から自分が求められること」が一致するときこそストレスフリーに活動することが出来ます。自分を変えたいと願うなら、環境を意図的に変えること、環境が求める自分の姿に定期的にノイズを忍び込ませること。 「弱いつながり」という概念があります。パーティでたまたま知り合った人。つまりあなたのことを何も知らない未知の繋がりの人の方が、あなたが考え付かない未知の環境を教えてくれやすいということです。人生の充実には強い絆と弱い絆の双方が必要です。世の中の人生論は2つに分けられます。ひとつの場所にとどまって、いまある人間関係を大切にして、コミュニティを深めて成功しろという村人タイプと、一つの場所にとどまらず、どんどん環境を切り替えて、広い世界を見て成功しろという旅人タイプのもの。でも本当はその二つとも同じように狭い生き方なのです。だから、観光客タイプの生き方をお勧めします。村人の役割を忘れず、人間関係を大切にしながら、自分の世界を広げるノイズとして旅を利用すること。旅に自分探しのような期待をせず、検索ワードを拡げる経験としてクールに付き合うことです。もっというと、旅の目的地にある情報は何でもいいのです。出会うべきは、新しい人間関係、新しい欲望に妬かれること。いまや情報なんて大した価値はありません。その価値のない情報に感情のタグをつけることです。 強い絆は計画性の世界です。だから計算高い、慎重なひとは、強い絆をどんどん強めることを望みます。いま自分が置かれた環境の中で、統計的に考えて最適なパフォーマンスを出そうと努力します。ビジネス書やライフプランのマニュアルには、その方法がたくさん書いてあります。けれども、そもそも人生がいつまで続くのか。自分が死んだら終わりです。そのとき、統計的に基づいた計画に従い、リスクヘッジをすることが本当に正しいのでしょうか。他方で弱い絆は偶然性の世界です。人生は偶然でできています。本書で「新しい検索ワードを探せ」という表現で繰り返しているのは、要は「統計的な最適とか考えないで偶然に身を曝せ」というメッセージです。最適なパッケージを吟味したうえで選ぶ人生、それは、ネット書店のリコメンデーションにしたがって本を買い続ける行為です。外れはないかもしれませんが、出会いもありません。リアル書店でなんとなく目についたから買う、そういう偶然性に身を曝した方がよほど読書経験は豊かになります。偶然っでやってきたたったひとりの「この娘」を愛すること。その「弱さ」こそが強い絆よりも強いものなのだと気づいたとき、ぼくは、ネットで情報を収集し続ける批評家であることをやめて、旅に出るようになったのでした。 日本人は、会社や町内会など、自分が所属している狭いコミュニティの人間関係を大切にしすぎていると思います。人間関係は少しおろそかにするぐらいがちょうどいい。 ぼくが推奨するのは観光客でいることです。所属するコミュニティがたくさんあるのはいいことです。ただ、そのすべてにきちんと人格を合わせる必要はない。話も全部は理解する必要はない。一種の観光客、「お客さん」になって複数のコミュニティを適度な距離を保ちつつ渡り歩いていくのが、もっとも賢い生き方だと思います。 偶然性に身を委ねましょう。そんなに将来ことを考えなくてもいい。計画性のある人生は、予想外のできごとに対応できません。むしろ重要なのは、やってきた運命に身をゆだねること。全力で楽しむこと。人生において失敗とはありません。
https://w.atwiki.jp/jimotomanga/pages/36.html
東北地方>青森県が登場する漫画・アニメ 青森県 ガンパレード・オーケストラ 雲のむこう、約束の場所
https://w.atwiki.jp/donachie/
懐かしい夢をみました。 今日はすごく懐かしい夢をみました。 なんと初恋の人が出てきたのです。 小学生のころの人ですよ? ちゃんと子供の姿のままでした。 私も子供の姿だったのかな? でも夢の中でちゃんとどきどきしていたのです。 すごくモテる男の子でした。 明るくて、サッカーが上手で、ちょっと色素の薄い髪の男の子。 小学校を卒業して以来会っていないけど、今元気にしているのかな? どんな人になっているのか想像すると、期待したいような、怖いような(笑) それにしても、あの淡ーい感じのときめき自体、すごく懐かしかったです。 http //www.stcharlesyachtclub.com/
https://w.atwiki.jp/kiyotaka/pages/29.html
第17話 合宿~3日目~ ピッピ~!! 旅館の前、緑の芝生が敷き詰められている広場に、笛の鋭い音が響き渡った。 その音が鳴った途端、外にいた人の群れは一斉に動き始めた。ある1点に向かって、波が海岸に向かうかのごとく、 ゆっくりと移動していく。 しかし、今はまだ7時半にもなっていない時刻だ。 そんな朝早くから急に身体を動かす事など、普通の人ならできるはずも無い。加えて、ここにいるのは朝に弱い学生 達だ。合宿のハイテンションが重なったとしても、学生にとって朝は本当に辛い。ここにいるポケバト部部員達もまた、 身体の動きが物凄く鈍い。のろのろと集合場所に向かっている。 イエローもまた、そんな人波に紛れていた。 ――ね、眠たい・・・―― 昨夜は早く寝たとはいえ、やはり早く起きる事に慣れていないイエローは、気を抜けば閉じそうになる瞼を閉じまい、 と努力していた。自分にとって、早起きというのは拷問に近いような気がする。本当に眠たい。 そんなことを考えながら、イエローは集合場所までのさりのさりと歩いていく。 顔をあげて集合場所を見てみると、レッドが不満げそうな顔をして立っている姿があった。部員達の反応の悪さを快く 思っていないのか、「おいおい・・・・朝っぱらからそんなにテンションが低くてどうすんだよ・・」と言ってため息をついて いる。 イエローはそれを聞いて、レッド先生は眠たくないんですか?という質問を浴びせたかったが、それを言う気力さえも 今はない。本当に眠たい。朝から元気なレッドが本当にうらやましかった。 レッドが、もう一度笛をくわえた。 ピー! 2回目の笛ともなると、周りはどんどんと集合するようになっていた。 数分すると、50人を越える部員は一箇所に集まり終わり、列も揃った。それに満足したらしいレッドは、これから行う 行事のことを説明し始めた。 今日は合宿の3日目。 特別なイベントが、朝から行われるのだ。 「それじゃ、2、3年生はもう分かってるだろうけど、初めての場所でするってことで、1回説明しとくからな。今から登る のは、ここから見えるあの山だ」 集まっている人の視線が、レッドの後ろに見える、朝もやでぼやけ気味な山へと向けられた。 標高は、およそカントーのお月見山と同じくらいの高さ。山の幸が豊富で、秋にはマツタケも少しばかり取れる。 反面、クマもいるという危険さもあるようだが、とにかく自然が豊富らしい。 イエローは、昨日ワタルから教えてもらった山の情報を思い出しながら、名前はなんだったけ・・?と考えていた。 「高さは結構あるけど、この行事で使うのは、中腹ぐらいまでだからな。それより上には行くなよ。で、これからあの山 に、ペアで登ってもらう。事前に分けてあるはずだな?」 レッドがそう言うと、イエローは自分のペアとなる人物・・・・アカネのことを思い返した。昨日まではお酒が抜けきらな くて青い顔をしていた彼女だが、今日の朝になって元気な姿を見せていた。今は近くに見当たらないが、どこかで自 分と同じ様にレッドの話を聞いていることだろう。 「時間は、午前8時から始まって、午後の5時半に終了。時間としてはいっぱいあるから、有効に使えよ」 午前8時から午後の5時半まで。 イエローはとっさに時計を見て、今が7時35分だと確かめた。 「それじゃ、ルールはこうだ。 モンスターボールは各ペア30個まで。スーパーボールとか駄目だぞ。 持ちポケは3匹。出発前に俺たちが荷物の確認するから、ごまかしはきかないからな。道具とかは自由だ。ポケモン を強化させるアイテムとかも持って行ってもいい。だけど山を登るから、荷物の量も考えとけよ。 で、山を登って、野性ポケモンを捕獲していく。今日と明日の2日間でどれだけ捕まえられるか、ってのが、今回の主 旨だ」 流れるように繰り出される言葉を、イエローは冷静に聞いていた。そして、自分の横に置いてある、小さめのカバンの 中身を思い返してみた。 今、カバンの中に入っているのは、きず薬を何個かと、自分とポケモン達の昼食、毒消しなどの特殊治療薬をいくつ かだけだった。本来ならもう少し道具を持っていった方いいのだが、元々、自分には体力が無いほうなので、これ以 上持っていくと途中でばててしまう。これくらいがちょうどいいのだ。 持ちポケは、ピカチュウの「チュチュ」、ラッタの「ラッちゃん」、ドードリオの「ドドすけ」の3匹だ。 どれも小さい頃から一緒にいる、信頼できる仲間達だった。 「それと、何かあったらポケギアで連絡するように。怪我をしたり、道に迷ったりしたらすぐに連絡してこいよ?この山 では一応、遭難者が出たこともあるらしいからな・・・普通に登ってたら大丈夫だけど、万が一のためだから・・・それじ ゃ、みんな荷物持って、8時になったら出発してくれ。それまで自由行動だ。 じゃ・・・・頑張ってくれ。」 そう言うと、レッドは部員達を解散させた。 イエローは荷物を持って立ち上がり、周りを見渡して、ペアである自分のパートナーの姿を探してみた。ペアに関して は合宿に来る前に事前に決めており、男女で組んでもいいし、友達でも組んでもよかった。 イエローは、普段から仲が良いアカネと組んでいた。 しばらく探していると、少し離れた所で、自分と同じ様に周りを見渡しているアカネが見えた。おそらくこちらを探してい るのだろう。イエローはすぐにそこまで近づいていった。 「アカネさん!」 「イエロー。調子はどうや?」 「はい、良いですよ・・・って、アカネさんこそ、昨日まで頭痛いって寝込んでたでしょ?大丈夫なんですか?」 「大丈夫やって。このアカネちゃんが、こんなんで2日も倒れるわけ無いやろ」 顔色もよく、はきはきと喋っているアカネは、およそ調子が悪そうに見えなかった。昨夜の様子とは大違いだ。 これなら大丈夫、とイエローは思い、アカネとの話を切り上げ、もう一度周りを見渡してみた。 周りの部員は、誰も彼もが、前日までのハードな練習のためにつかれきった顔をしている。 唯一、元気な様子をしているのは、先ほど説明をしていたレッドと、隣にいるアカネぐらいなもの・・・ 「イエローさん!!」 いや、もう1人いた。 後ろから声をかけられ、イエローはその声の主が分かりきった状態で、振り向いた。 「クリスさん・・」 「イエローさん、おはようございます!!」 とても元気な顔で――――というより、不自然に明るい笑顔で挨拶をしてきたクリスに、イエローは「あ・・おはようご ざいます・・」と返すことしかできなかった。なぜかは分からないが、今のクリスには何か異様な威圧感のようなもの が感じられた。 クリスの後ろにはゴールドが立っていた。おそらくクリスと組まされたのだろう。昨日も夜更かしをしてしまったのか、 ゴールドは立ちながら眠りそうになっていた。 そうやってゴールドの観察をしていると・・・ 「イエローさん・・・・・今年は勝ちますからね・・・・・」 クリスが急に、真剣な顔になって話してきた。 ――勝つ?―― イエローは、最初は彼女が何をいいたいのかよく分からなかった。いきなり目の前にやってきて『勝つ』と言われて も・・・何の事かさっぱりだ。 しかし、すぐに今日のイベントの事を思い出し、ああ、そうか、とやっと納得することができた。 この行事――つまるところのポケモン捕獲競争は、毎年行われている。 もちろん、1番多く捕まえたペアは優勝者となる。 その優勝者は、2年前はクリスがいたペア、昨年は同数でイエローがいたペアとクリスがいたペアだったため、昨年 はクリスが凄く悔しそうにしていたのだ。 しかし、別にイエローはこの行事で優勝したいとは思わなかった。その証拠に2年前のこのイベントで、イエローは最 下位付近だったのだ。ポケモンを捕まえる事を真剣にやる気はないし、優勝したとしても何の得もない。適当にやって いこうと思っていたからだ。 同じ様に昨年も、それほど真剣にやったわけではなかったのだが、気が付いたら沢山捕まえていて、それで優勝と なってしまったのだ。 そして、今年ももちろんやる気を出していないイエローは、先ほどの、クリスの宣戦布告とも取れる言葉に対しても、 「いえ・・私は、数にはそれほどこだわらないし・・・」 と答えていた。 しかし、クリスは、 「いいえ!本気でやってくださいよ!私は必ず、あなたに勝ちます!」 と、高々に勝利宣言をし、立ちながら眠っているゴールドの首根っこを掴みながら、そのままどこかに行ってしまった のだった。 ――はあ・・・・変わってないなあ・・―― イエローは、相変わらず「捕獲」のことに関すると性格がまるっきり変わってしまうクリスのことを思って、溜息をつい た。 確か、これを最初に目撃したのは1年生の時だったはずだ。 ポケバト部に入部し、この学園でできた初めての友達だったクリス。真面目で可愛い彼女とはすぐに仲良くなった。 そんな彼女とともに、1年の時、近くの草原にポケモンを捕まえに行ったことがある。 始めは、野性ポケモンとバトルしたり、それを捕まえたり・・・と、普通にやっていたのだが・・・・ その付近ではめったに見られない『ストライク』を見つけたとき、彼女の表情は急激に変化したのだ。 目はつり上がり、言葉の雰囲気も真剣になり、「ストライク!捕獲します!」と言って、それに向かっていったクリスの 姿は・・・・日常とはまったくかけ離れていた。 そして、その10分後・・・・ 見事にストライクを捕まえたクリスは、もう普段の状態に戻っていた。 しかし、捕獲する時と普段のギャップの激しさに驚いてしまったイエローは、しばらくの間呆けていて、まともに喋られ なかったのだった・・・ ――やっぱり、あの違いにはついていけないなあ・・・―― だいぶ慣れてきたとはいえ、今でも、あれを見て驚く事がある。 特に、道端などで急に「捕獲します!」と声を張り上げた時には、心臓が飛び上がりそうになってしまうのだ。 何故、クリスはあんな風になってしまったのか・・・ イエローはそんな風に育てたであろう彼女の母親を思い浮かべながら、ようやく8時になりそうな時計を見ていた。8 時は、このイベントが始まる時間だ。 「そろそろ、始まりそうやね」 自分と同じ様に時計を見つめていたのであろうアカネが、唐突に話し掛けてきた。 「ええ・・・・・・アカネさん、頑張りましょうね」 「もちろんや!」 そんな風にお互い激を飛ばしあい、イエローとアカネはスタート地点の方に向かっていった。 ――そろそろ・・・か・・・―― ワタルは一人、我先にと勝手に出発しそうなポケバト部の部員たちを、離れた所で眺めていた。 50人を越える人だかりが、1つの場所に集まるというのは、端から見ると何をしているのかよく分からない。何度かこ の近くを通り過ぎた人がいたが、そんな彼らも、この異様な光景に首をかしげていたものだ。 ――ふう・・・・・―― ワタルは、この旅館からそう遠くない山―――幽玄岳という名前の山だ――を眺めてみた。この山は今回の行事で 使われる山だ。緑が生い茂っている景観を見せつけ、雄大な自然を感じさせている。何週間か前にこの場所にやっ てきて以来、それはまったく変わっていなかった。 それを見ながら、ワタルは思った。 山に登って、ポケモンを捕まえる事・・・・・これを危険だと思うものはいないのだろうか?と。 山というものは、自然の脅威を直に感じられる場所だ。森林の奥深くに行けば迷うこともあるし、雨が降れば、土砂崩 れなどの災害が起きる事もある。不特定要素が多く、最悪、人が危険な目に会うことだってある。 無論、これらの危険が無いように、先生陣は部員にポケギアを持たせ、何かあった時の連絡網を引いているらしい が・・・・それだけでは、この山が安全とは言い切れないだろう。 この幽玄岳には、ある地点に差し掛かると、ポケギアの電波が一切届かなくなる場所があるのだ。ポケギアの電波 は通常かなり強く設定されており、地下でもある程度は通話できるようになっている。 そのポケギアを使えない場所が、この山には、判明しているだけでもかなり数がある。 もちろん、レッド達にはこの場所のことを言った。すると、そこら辺は活動範囲から離れている、という回答が返ってき た。下見をして、なるべく安全な場所を選んだ、とのことだ。 しかし、それでも、万一、という可能性を否定できない。 ワタルはそのために、ちょっとした『策』を用意していた。万一の事故が起きないために。そして、ポケバト部の部員達 に危険が及ばないように。 1つは、地元の自警団に周辺の見回りをやってもらうことだ。 この町は、小さいながらもちょっとした自警団を持っている。彼らに幽玄岳を見回ってもらい、何かの『例外』が発生し ないように、加えて部員達を守ってもらうようにする、というのが目的だ。こうすれば、レッド達の手助けに少しは役立 つだろう。 そして2つ目は、ポケギアに関することだった。 電波障害地域という厄介なものがある以上、ポケギアに関してのことをなんとかするしかない。電波障害になってい ようと、ちゃんとした連絡ができるポケギアが欲しかった。 このことに関しては・・・・・ある1人の人物にやってもらった。 ワタルはポケットからポケギアを出してみた。それをよく眺めてみる。白い表面に、小さな画面。裏には何かの『跡』が 残っている。焼いたような茶色のこげと、ネジを回した後、そして1番目を引くのはアンテナ部分だ。既製のものとは 少し違う種類のアンテナを使っている。 このポケギアは、改造ポケギアだった。 昨日の夕方、夕日が照る中、旅館の玄関前で渡された物―――ジェルブから貰った物だった。 ――あいつには・・・驚かされたな・・―― ワタルは、ちらりとスタート地点の方を見てみた。そこにはジェルブが、赤毛の少年と喋っている姿があった。赤毛の 少年は見たことがある。レギュラーの中の1人だったはずだ。 そう確認した後、今自分が持っているポケギアを再び眺めてみた。 3日前、つまり合宿が始まる前日に、ワタルはジェルブに幽玄岳のことを話していた。山に入る事が危ないことと、電 波障害地域のことを。 するとジェルブが、「じゃあ、ポケギアを改造するから」と言い、本当に改造してきたのだ たった3日で作ることなど不可能だと思っていたが、ジェルブは確実な仕事をしていた。今このポケギアを見ても、そ れが実感できる。 このポケギアは、市販の物よりも電波が強力になっており、電波が届かない場所であろうと、クリアに通話できるらし い。(ただし、通話相手が通信良好な場合のみ) ほかにも色々と手を加えた形跡も残っているが・・・・詳しい話は、あまり聞いていなかった。 これだけの改造をしたのに、「疲れた」のたったひと言だけ言って、このポケギアを渡してきたジェルブ。その改造能 力に驚かされた。ポケギアというのは、専門の者でさえも改造するのがためらわれると言われており、それを、自分と 彼自身の分・・・・2つも改造するとは・・・ ――5年前よりも、そういう所の技術は上がっているということか・・・―― パーン!! 急に、ピストルの音が、辺りに響き渡った。 ワタルは顔を上げ、音の出所を見てみた。空き地の端から、何人もの人が一気に山に向かっていた。 もう、スタートしたらしい。 ――・・・・始まったか・・・―― 今回、先生陣のサポートとしてこの行事に加わったワタルは、部員が一斉に動き出したのを見ると、控え場所として 使われているテントの下に向かった。 ――・・・・嫌な予感がするな・・・―― テントに向かっている途中、ワタルはもう一度幽玄岳を仰ぎ見た。緑の木々が生い茂り、それが青い空と微妙なコン トラストを描いている。何かの絵師がいたなら、ひと目で描き止めたいと思うような風景だろう。 しかし、ワタルはその風景に寒気を覚えた。確かに綺麗だ。緑と茶と青が織り成す風景は、自然と人の目を引き寄せ る。だが、その惹きつける力の根源にあるのは、『雄大』でも『美麗』でもない。 『妖艶』だ。 ワタルはその妖艶さに寒気を感じた。冷たさと美しさをかねそろえた『妖艶』という魅力。人を引き込み、2度と外へと 出さないような『力』。それら全てに、吐き気を覚える。 ワタルは幽玄岳から自然と目をそらし、山が視界に入らないようにした。 そして、それと共に、先月あの山で遭難し、なんとか無事に生還した60を過ぎる老人のことを思い出した。老人は、 果実や動物を狩る猟師で、山に関しては熟練と言ってもいい人物だった。 だが、その老人もまた、幽玄岳で3日間、遭難していた。 その老人から、直接話を聞いたことがあった。 『あの山にはよお・・・俺の昔の女房がいたんだよ・・・・・・・こう、笑いかけてきてよ・・・・・それだけじゃなく、俺が昔持 ってた、大事な釣竿も見えてきたんだ・・・・・だけど・・・しばらくすると、足が震えてきて、そのまま倒れちまって・・そ して、目が覚めたら、救助隊に助けられてたんだよ・・・・・・・・・あれがいったいなんなのか分からねえけど・・・・・あ あ・・もう一度、女房の顔が見てえなあ』 震えながら喋っていたしわくちゃの老人の顔を思い出しながら、ワタルは何度も考えたこの山の真相について、再度 思い返してみた。 最初、この老人の話を聞いた時、彼が見たものは幻覚だと思っていた。極限状態にまで達した人間は、ある種の幻 覚を見ると聞いたことがある。この老人もそれと同じで、死ぬ寸前にまで追い詰められたために幻覚を見たのだ、と思 った。 しかし、だ。 これは『幻覚』という範囲で片付けられない問題だった。あまりにもこれと似た証言をする人が多く、さらには、遭難を しておらず、死の極限状態に達していない健康な人がこの『幻覚』を見たという事例もあったのだ。 『幻覚』は、極限状態にならないと見る事は少ない。健康な人が見るなど、皆無に等しい。 いったい、あの山に何があるのか・・・・ ワタルは、考え事を止め、テントに向かう足を速めた。 ――無事に帰ってこい―― その思いだけを頭に秘め、ポケギアを握り締めている手の力を強くした。 山の中 PM1:00・・ スタートしてから、もう5時間が過ぎていた。太陽もそろそろ高く昇ってきていて、あと1時間もすれば、確実に気温が 30℃を超えてしまうだろう。 そう思い、ゴールドは帽子を、深く被りなおしてみた。 ゴールド達は、スタートから山の中を休まず歩き続けていた。草木を掻き分け、色々なところを回っているが、ポケモ ンの方はあまり見つかっていない。普段なら十分おきに現れる野性ポケモンだが、今に限って出現回数が少なくなっ ているのだ。理由はいろいろと考えられるが、絞り込めるのは2つほど。元々この山にそれほど多くポケモンがいない からなのか、それとも、ポケモン達の警戒心が強いのか。どちらかなのだろう。 「も~なんで出てこないのよ~!!」 前を歩いていたパートナー――クリスが、もう我慢できない、といった様子で、生き物の気配もない周りに向かって悲 痛な叫びをあげた。 それを聞いたゴールドは、ポケモンが出てこないのは彼女のせいかもな、と内心に考えてみた。 ぎらぎらした目で周りを見渡し、今にもモンスターボールを出そうと、腰に手を当てながら歩いている姿は、わがパート ナーながら結構恐いものだ。 「そんな簡単に出てくるもんでもねえだろ・・」 目の前にあった草を手で掻き分けて、ゴールドは一応、そんな風に答えておいた。クリスはそれを聞くと、大きな溜息 をつき「でも・・・」と小さな声を出したが、それからは無言で歩いていた。 ――クリスが原因ってのは冗談として・・・・・ここまで出てこないのも変だよなあ・・―― クリスのことは置いておき、実際にここまで出てこないのは変だ、とゴールドは感じていた。どれだけ歩いていても、 ポケモンの気配が無い。 最後にポケモンを見つけたのは、今から3時間も前のことだった。 それも、コラッタ一匹のみ。 こんなにポケモンを見かけないのはあまりにも変だし、だいたい、主に草原に生息しているはずのコラッタが何故こん な山の中にいるのかも、よく分からない。 ――なんか、ありそうだよなあ・・・・この山―― 悲しそうな様子でいるクリスの背中を見ながら、ゴールドは一度、ポケギアでイエローと話してみようか、と思った。 彼女らがポケモンを見つけているのか聞いてみたいし、純粋に、イエローがどれだけポケモンを捕まえているか興味 がある。クリスとの勝負もあるし・・ 電池の消耗を防ぐためにポケギアはあまり使わないように言われていたが、決めたら即行動が信念のゴールドは、 すぐさまポケギアを取り出し、イエローのポケギアの番号を押した。ごちゃごちゃ考えず、その後は、コール音だけを 聞き、相手が出るのを待つことにした。 「ゴールド、何してるの?」 こちらの行動に気付いたのか、クリスが不思議そうな声を出しながらこちらを向くのを感じた。 しかし、その時には、ガチャ、という音が、ポケギアから発せられていた。 『はい、イエローですけど』 「お!部長ッスか?おれおれ、ゴールドっス」 『ああ、ゴールドさん・・・・どうして敬語なんですか?』 「まあ、そんなことは気にしないで・・・部長、どれだけポケモン取ったんスか?」 ゴールドがそう言うと、クリスの顔が一気にこわばったのを感じた。彼女もかなり気にしているようだ。 少しの間、電話からの声はなくなっていたが、数秒して『・・そうですね~』と言う声が聞こえた。明るくも暗くもない、 いつものイエローの口調だった。 「で、どうっスか?」 『ついさっきに、ヤミカラスを捕まえましたよ。確か、これを合わせて・・・・あれ?いくつだったかな?・・・アカネさん、 私たちって何匹捕まえましたっけ?』 イエローの傍にはアカネもいたようだ。電話の奥からアカネの声で、『ん、12やね』という言葉が発せられているのが 聞こえた。 イエローの声がそれに続く。 『12だそうです。モンスターボールもそろそろ無くなりそうなんで、3時か4時には、旅館の方に戻ろうと思ってます』 「そっか。けっこう凄いッスね」 『それほどでもないですよ。じゃあ、そろそろ移動し始めるんで・・・・ゴールドさんも、クリスさんと一緒に頑張ってくだ さいね』 「サンキュ、じゃあ」 ピ! ゴールドは、ボタンを押して通話を終了させ、それをポケットにしまった。そのすぐ後に前を見てみると、クリスが顔を 下に向けて立ち尽くしている姿があった。 そして、呟く。 「12・・・・・」 「クリス・・」 自分達はまだ、3時間前に見たコラッタを含めて、3匹ほど。 イエロー達は、12匹・・・ もうすでにかなりの差がついていた。 さすがにクリスも落ち込むか?と思ったゴールドは、励ましてやろうとクリスの肩に手を置きかけた。 と、 「・・・・ふふふ・・・」 急にクリスが不気味な笑い声を上げ、ゴールドはぎょっ!と数歩後ろに下がった。この笑い声は何度か聞いたことが ある。手強いポケモンを捕獲しようとする時や、自分に怒ってくる時に必ず出す笑い声だ。ゴールドでさえ、この笑い 声には恐怖を感じる。 クリスは笑うのを止めると、いやに冷静な声で話し始めた。 「・・・・・・ふふ、上等です。私はその3倍を取る!行くわよ!ゴールド!」 急に元気になったクリスは、すさまじい勢いで草を踏み倒していき、山の奥に向かっていった。 その光景を見て呆然としていたゴールドは、自分が励ます必要も無かったな、と微笑んだ。あの一生懸命で諦めない 姿勢が、クリスのいい所だ。 「おい!待てよ、クリス!」 ゴールドはそんな彼女に置いてかれないよう、そして、その一生懸命さに負けないように、自分が出せるだけのスピ ードで、彼女を追いかけるのだった。 山の中 PM3:00・・ ジェルブは、さまざまな色をしている花の群を静かに見つめていた。森林が生い茂っている中、静かに咲き誇り、周り の景色に彩りを与えているその花は、しかし、まったくといいほど不可思議なものだった。 春、夏、秋、冬・・・・ これらの季節の花が、1ヵ所に集まっているのだからそう感じるのもしょうがないのかもしれない。 ジェルブは目の前にあったタンポポの花を手に取り、立ち上がった。 「なあ、シルバー。これ、どう思う?」 「・・・・・別に・・・」 相変わらず無愛想なパートナーに溜息をつき、ジェルブは再度、春夏秋冬の花が咲き誇る場所を見つめてみた。タン ポポ、ひまわり、菜の花、菊の花・・・・・・自分の季節感が狂わされそうなその群れを見て、ジェルブは、これもまた、 幽玄岳の不思議な所なのだろうか?と思った。 ワタルから聞かされた、幽玄岳の謎。 先ほどからポケモンは1匹も出てこなかった。数分前までは休む暇もないくらいに現れていた野生ポケモンが、この 場所に入った途端に出現しなくなったのだ。川の水が急にせき止められたように、ぴたっと。 何故かは推測がついた。ここが、ワタルの言っていた、ポケギアの電波さえも通らない場所だから、だろう。ついさっ き、シルバーのポケギアを見せて貰ったが、やはり圏外になっていた。自分が持っている改造ポケギアさえ電波状況 が悪いのだから、普通のポケギアではそうなってしまうだろう。ワタルの言うとおり、徹夜してまでポケギアを改造す るのは得策だった。 しかし、どうもよく分からなかった。 何故、この場所だけ電波が通りにくく、ポケモンがまったく出現せず、さらには春夏秋冬の花が咲いているのだろう か?この3つの謎に共通項などなく、なんら関係がないように思われる。しかし、何かが原因になっていることは間違 いないのだ。 ジェルブはそう思って、周りを見渡した。 この場所はちょうど、木々が生えていない中空となっている地点だった。森林の絵に消しゴムで丸く消した場所のよう だった。 しかし、それ以外に際立った違いが見つけられない。確かに、このように草木が生えないで、円状にくりぬかれてい る場所というのは珍しいが、ないわけではないのだ。 そうなると、この場所は、幽玄岳の他の場所となんら変わりのない場所、ということだ。 ――いったい、なにがあるんだか・・・・―― そう思った瞬間、ジェルブは奇妙な寒気を覚えた。刃物を首に突きつけられたかのような気分が、急に襲ってきた。何 が原因なのかは分からない。しかし、この気配は異様だ。 ジェルブは、すぐにここから出ないと、という考えに駆られた。。理由も分からず、ここから撤退したくなる気持ち・・・そ れが、急に現れた。 ジェルブはそれに逆らわず、シルバーに「他の場所に行くか」と言った。 シルバーは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに頷いて見せた。ポケモンが出てこないのなら、ここにいてもしょうがない、と 思っているのだろう。 移動し始め、草木を掻き分けていく。現在の時刻は3時過ぎ。もう少ししたら、旅館に戻らなければならないだろう。ポ ケモンは、数匹程度は捕まえていた。あと1匹ぐらいは欲しい所だった。 そうやって林を抜けようとした瞬間、さきほどの『気配』が急に背筋に集まった感触を受けた。ぞっとするような気配。 まるで、ヘビの舌で舐められたようであり、自分が『獲物』であるという感覚が襲ってきた。 驚いて後ろを振り向いてみるが、そこには何も無い。 「どうした?」 シルバーが自分の行動を不思議に思ったのか、疑問を含んだ声で話し掛けてきた。 ジェルブは、後ろを隅から隅まで見渡して、何も無いのを確認し「いや、別に」と答えた。もう、寒気はなくなっており、 背筋が凍るような感触もない。 ジェルブは再び、道を作るために草木を掻き分けていった。 ――いったい・・・・なんだ・・・?―― まだ背中には、先ほどの感触の悪さが残っていた。 山の中 PM4:00・・ スタートしてから、8時間以上経過していた。 太陽はまだ落ちる気配は見せないものの、日中よりもかなり西の方に傾いていた。あと2、3時間もすれば、ほとんど 沈んでしまうだろう。 イエローはそんな太陽を仰ぎ見ながら、ゆっくりと歩いていた。 今歩いている道は、本当に危ない。 イエローから向かって右手は崖のようになっており、壁はほぼ垂直、高さは、上からでは木に邪魔をされてよく分から ないが、おそらくかなりある方だと思われた。落ちればひとたまりも無いだろう。 左手は森林が広がっているので、道の左側を選んで歩いていれば、崖に落ちる事は無い。 が、今足を進めているこの道は、いちおう平らではあるが、幅としては1メートル強ほどしかなく、慎重に歩かなけれ ばならなかった。 そんな道を、イエローは、さっきから1人で歩いていた。 パートナーのアカネは、30分ほど前、珍しそうなポケモンをもの凄いスピードで追いかけて行ったまま、戻ってこなく なってしまったのだ。いちおう、ポケギアで連絡を取って無事を確かめ合い、各自で下山する事にしたのは、つい10 分前のこと。 ――それにしても・・・・・・なんでこんな道を歩いてるんだろ?―― 今、何故こんな危ない道を歩いているのか、イエローは自分でもよく分かっていなかった。 そろそろ下山しようと歩き始めたのはいいものの、ちゃんと地図を確かめながら道を選んできたはずなのに、何故かこ の道に出てしまったのだ。こんな危険な道、絶対にいくつもりはなかったはず。 地図を見てここが何処なのか確認してみると、自分が行くはずだった道の、ちょうど反対側なのに気付いた時は、物 凄く驚いた。 自分は方向音痴の気はないはずなのに・・・・ イエローは、疑問を頭に浮かべながら、自分が踏んだ木の枝が、ポキッ、という音をたてて折れるのを聞いた。 ――!!―― その瞬間、何かの視線を後ろから感じた。べっとりと身体にまとわりつく、気持ちの悪い視線。まるで人間のものでは ないような・・・・ イエローはすぐさま、後ろを振り返り、その視線の出所を探した。だが、後ろには崖が広がっているだけで、そこに何 かが存在している気配も無い。 ――いったい・・なに?―― 視線はもう消えていたが、感触の悪さはまだ身体に残っていた。あんな視線は初めてだ。これまで十数年生きてきた 中でも、味わった事がないほど気味の悪いもの・・ と、 「わあ!」 急に身体のバランスが崩れて、上半身が後ろに倒れ始めた。とっさに何かを掴もうと腕を伸ばすが、木の枝を掴むは ずだった手は空振りに終わり、土を踏んでいた足も宙に浮いていた。 何かが腰の辺りを引っ張っている。それも崖の方に向かって・・ そう気付いた時には、身体はすでに崖に放り出されて、空中に浮いていた。天地が逆転し、西に傾いている太陽が 目の前に広がって、身体がさかさまになっていくのを感じた。 「うわああああぁぁぁぁ!!・・・・」 イエローの絶叫が辺りに響き渡り、周りの鳥がその声に驚いて一斉に飛び立っていく。 身体が重力に引っ張られて加速していき、ぐんぐんと落ちていくのを感じたイエローは、何とか腰につけてあるモンス ターボールから、ポケモンを出そうとした。ここは誰でもいい。とにかく落ちることだけは避けないといけない。 しかし、ボールに触れたと同時に、背中に物凄い衝撃が加わった。 まるで、物凄く大きいハンマーで殴られたかのような衝撃に、頭は真っ白になる。身体中の血液が逆流し、神経が一 辺に刺激されたかのような感覚を受け、何も考えられなくなっていく。 そして最後に、イエローは「あぁ・・・」という声をあげ、そのまま意識を飛ばしていった。 旅館の前 PM5:30・・ そろそろ部員達が帰ってくるはずの時刻になったので、レッドはテントの中から、太陽が照りつけている外に出た。夕 方になりつつある空は、夕焼け色に染まりかかっている。日中よりいくらか涼しくなった風は、身体に当たると心地い い感触を受けた。 髪の毛が風になびいているを感じながら、レッドは、モンスターボールの確認をし始めた。 現在時刻は、5時半。もうすぐ、部員達が戻ってくる集合時間になりかけていた。 あともう少し時間がたって全ての部員がかえっていなければ、自分たちが探しに行かなければならないのだ。そのた めのボールの確認。プテラで空を飛んで、巡回するつもりだ。 プテラの「プテ」が入っているモンスターボールを、確実に腰につけているのを確認したレッドは、部員達の集まり状 況を見ようと、集合場所を見てみた。 ――・・・・結構戻ってるな。―― 今、戻ってきているのは、約9割ほどの人数だった。ほとんどの部員が帰ってきていると考えていいだろう。 それでも戻っていないのは、山ということで浮かれてしまって時間を忘れている奴か、それとも遭難してしまった奴 か・・・・・このどちらかなのだろう。 と、集合場所にイエローがいないのに気が付いた。 これはおかしい。彼女は時間にはきっちりとした方で、集合時間に遅れるというのは、今までではあまり無かった事 だ。 それでも今いないということは、何かしら理由があって時間がかかっているのか、それとも・・ 「レッド先生!」 「ん?・・アカネか、どうした?」 急に声をかけられて横を見てみると、そこにはイエローのパートナーだったはずのアカネが立っていた。 レッドはそれを見て、少なからず、おや?と思った。 アカネがここにいるということは、イエローも帰ってきているはずだ。それでも集合場所で見かけなかったのは、旅館 に入ったのか、自分が見落としているのか・・・ 「レッド先生!・・・・・イエローが・・・」 「・・・・?イエローがどうかしたのか?ここにいるんだろ?」 悲壮な顔をして話しているアカネに、レッドはなんだか嫌な予感がした。 「イエローは・・・・・うちとははぐれて・・・それで・・・1時間半ぐらい前に連絡取ったんやけど・・・・・・その時は電話に 出て、別々に山を降りよう、って決めたんやけど・・・・・」 「アカネ、落ち着いて喋れ。それで、今、イエローはどうしてるんだ?まだ山の中なのか?」 「わかれへん・・・・・・今、電話かけてみたんやけど、コール音はしても、全然でえへんし・・・・・先生、うちどうした ら・・・・」 大変だ。 レッドは時計を確認してみた。 現在時刻は5時45分。集合時間からは15分過ぎている。 レッドは頭を素早く回転させて、今の状況を整理してみる。 イエローがアカネとはぐれたとしても、おそらく1人で下山は出来るだろう。それだけの能力は持っているはずだ。 この山はかなり広いものの、今回の行事で使うのはごく限られた場所のみだ。イエローがその範囲外に行ったとは 考えにくい。範囲内からなら、いくら離れた所からでも、1時間はあれば下山できる。 イエローとアカネが連絡を取り合ったのは、アカネの話だと1時間半前だ。 ということは、イエローは下山するのに、1時間半以上かかっているという事だ。これはおかしい。ポケモンを使えば、 もっと早く山を降りる事ができるはずだ。 加えて、ポケギアをかけてコール音がするということは、ポケギアに異常が発生したわけでもない。その持ち主の手 から離れたか、持ち主に何かが起きたか・・・ となると、結論として、イエローは・・・・・・ 最悪の状況に行きついてしまったレッドは、「うち・・・うち・・・」と言いながら泣き出しそうになっているアカネを、近くに いたナナミに預けて、すぐに、旅館へと向かっていく。 ――・・・・・くそ!―― 自分がとれる限界の速さまで身体を動かして、旅館の玄関へと急いだ。どれだけ急いでもなかなか目的地に着かな いことを歯がゆく思い、今は1分1秒も無駄には出来ない、と感じた。 暗くなってしまうと、イエローを探す事は格段に難しくなる。 精一杯走って、やっと玄関にたどり着いた。ここまでかかった時間は数十秒のことだったろうが、レッドにとってはこの 数十秒がおしかった。 自動ドアをくぐってロビーへ、そして、そこからさらに奥へと進んでいく。 旅館の1階、104号室にたどり着いた。ここが、レッドとグリーンの部屋だった。1日目はあまり使わなかったこの部 屋だが、今となっては暇な時間をほとんどこの部屋で過ごしている。それはグリーンも同じなはずだ。 ドアを勢いよく開けて、レッドはスリッパもはかないまま、中に入った。窓の傍に備え付けられている椅子にグリーン が座っている。本を読んでいるようだ。レッドはグリーンの方に向かっていった。 「グリーン!!」 レッドは大声でグリーンの名前を呼んだ。 呼ばれた本人は、本を読んでいるのを中断されたからか、機嫌が悪そうな顔を上げた。だがそれも一瞬。次にはレッ ドの尋常ではない様子に気がついたらしく、すぐに、「どうした・・・?」と、真剣味を帯びた声で尋ねてきた。 レッドは息を整えながら答えた。 「イエローが・・・・・・・戻ってこない」 「・・・・・・・どういうことだ?」 「実は・・・・」 レッドはことの経緯を話し始めた。 アカネとイエローがはぐれてしまって、それぞれ1人で下山しなければならなかったこと。 1時間で山を降りる事ができるのに、それ以上の時間がかかってもイエローは山を降りてこないこと。 そして、ポケギアのコール音は鳴るのに、持ち主は電話に出ないこと・・・・ これらを、なるべく要点だけをかいつまんで説明した。 全てを話し終えた後、グリーンは何か考えた後、すぐに、「まずいな・・・」と呟いた。 レッドは、それを聞いて、「今から俺が山に入るから、他の部員のことは頼めるか?」と言った。 グリーンはその申し出を、頷く事で了承し、「部員達を旅館に戻したら、俺も、ブルーや姉さんと一緒に、山に入る」と 言った。 レッドはそれだけを聞くと安心した。これで、ここの事はグリーンに任せられるからだ。 レッドはグリーンに向かって、「じゃ、頼む!」と言って、すぐさま部屋を出て行った。 ロビーを抜けて、急いで玄関から外に出る。 外は、夕焼けがまだしぶとく地上を照らし続けていて、気温は25℃を超えていた。走ってきたせいで汗もかいてい る。薄いジャケットの下に、気持ちの悪い汗が溜まっていた。 しかし、そんなことも気にせず、レッドは、腰につけてあるモンスターボールの1つを手にとり、それを前に放り投げた。 一瞬眩しい光が出たと同時に、自分の身長の2倍はある物体―――古代ポケモンである、プテラが姿を現した。レッ ドが何年か前、『秘密のこはく』という石から、機械を使って現代に生まれ出させたポケモン・・・・彼が持つ、唯一の 飛行ポケモンだった。 プテラに自分の肩を掴まさせて、レッドは、イエローがいるであろう、幽玄岳を目の前に見据えた。 幽玄岳は、朝と何も変わらない景観だった。ほとんど緑一色に染められており、今は夕焼けのせいでオレンジ色に見 えていた。 あの山の中に、自分の生徒がいる。 そう考えると、今、見えている山が憎い敵のように見えてきた。 ――イエロー・・・無事でいろよ―― レッドはプテラに、飛び立つように命じた。プテラは何度か翼を上下にはためかせ、飛ぶ準備をし始める。 すぐに、自分とプテラが宙に浮き始め、徐々に空高くまで上がっていった。 なるべく高く高度を取って、レッドは、プテラに「行くぞ!」と山に向かって飛ぶように命じた。 翼を大きくはためかせ、プテラは前方へと急激にスピードを上げ、物凄い速さで山に進路を取る。 レッドの腕時計は、午後六時過ぎを示していた。
https://w.atwiki.jp/anime_wiki/pages/5439.html
■ほしのこえ 音楽 ■雲のむこう、約束の場所 音楽 ■秒速5センチメートル 音楽 ■ef - a tale of memories. 音楽 ■ef - a tale of melodies. 音楽 ■星を追う子ども 音楽 ■大成建設CM「スリランカ高速道路」篇 作曲 ■徒然チルドレン 音楽 ■関連タイトル ef - a tale of memories. ORIGINAL SOUNDTRACK ~espressivo~
https://w.atwiki.jp/booker/pages/119.html
雲のむこう、約束の場所 クリフハンガー グリーンマイル クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦 クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ歌うケツだけ爆弾! クレヨンしんちゃん 暗黒タマタマ大追跡 クレヨンしんちゃん 雲黒斎の野望 クレヨンしんちゃん 伝説を呼ぶブリブリ3分ポッキリ大進撃 クレヨンしんちゃん ブリブリ王国の秘宝 クローズZERO クローズZEROⅡ クローバー・フィールド クワイエットルームにようこそ
https://w.atwiki.jp/mcstory/pages/18.html
アニメは映像メディアのなかでも、実写を用いないものを総称する。CGによるものだけでなく、クレイアニメやストップモーションアニメ(ストップモーションでは実写の場合もある)などがある。 個人制作では、アニメは労力が多く難しい。FLASHでイチから作ることもあれば、MADとして既存のアニメを加工する二次創作もある。個人制作アニメでは、「ほしのこえ」や「雲のむこう、約束の場所」などの新海誠が有名。また3Dアニメもある。
https://w.atwiki.jp/4423/pages/773.html
編集する。 2024-09-01 04 40 17 (Sun) - メニューは荒らし防止のためこのミラーページを編集してください。 ここで編集したものを管理者が入力します。 メニュー 管理者 メニュー編集 2024-09-01 04 40 17 (Sun) カウンター 今日 - 昨日 - 合計 - 管理 管理者の自己紹介 管理者の理念 書き込む人へ 4423情報システムウィキを使う人に 4423情報システムウィキを編集する人に 利用規約 管理者への要望 管理者、メンバーへの要望 管理者からの要望 管理者、メンバーからの要望 出典、参考資料 練習ページ 台紙 アニメ動画本編 管理者お勧め動画 ページ一覧 リンク 掲示板 雑談場メニュー 小説、SS 小説、ss アニメ 涼宮ハルヒの憂鬱 新世紀ヱヴァンゲリヲン 電脳コイル らき★すた ひぐらしのなく頃に 灼眼のシャナ みなみけ もやしもん 黒執事 ヒャッコ ゼロの使い魔 とらドラ! 今日の5の2 灰羽連盟 キノの旅 攻殻機動隊 CLANNAD 我が家のお稲荷さま。 狼と香辛料 かみちゅ! かのこん 図書館戦争 乃木坂春香の秘密 D.C. 〜ダ・カーポ〜 ご愁傷さま二ノ宮くん かんなぎ 魔法少女リリカルなのは 君が主で執事が俺で 撲殺天使ドクロちゃん レンタルマギカ うえきの法則 英國戀物語エマ 機動戦士ガンダム のだめカンタービレ ひだまりスケッチ 魔法先生ネギま! ふしぎの海のナディア 学園アリス カードキャプターさくら テレパシー少女蘭 沈黙の艦隊 ジパング 太陽の黙示録 秒速5センチメートル ほしのこえ 雲のむこう、約束の場所 もっけ ぼくらの ブラックジャック 動画 ニコニコ動画角川公認MAD1 ニコニコ動画角川公認MAD2 YouTube角川公認MAD1 YouTube角川公認MAD2 灼眼のシャナたん 動画メニュー 角川公認MAD作品 やわらか戦車動画 やわらかアトム動画 動画01 アニメ動画本編 かんなぎYouTubeMAD1 かんなぎYouTubeMAD2 涼宮ハルヒYouTubeMAD 涼宮ハルヒYouTubeMAD2 涼宮ハルヒYouTubeMAD3 涼宮ハルヒYouTubeMAD4 ゼロの使い魔MAD ニコニコ動画ゼロの使い魔MAD1 ニコニコ動画ゼロの使い魔MAD2 ニコニコ動画ハルヒMAD ニコニコ動画涼宮ハルヒの憂鬱MAD1 ニコニコ動画涼宮ハルヒの憂鬱MAD2 ニコニコ動画涼宮ハルヒの憂鬱MAD3 ニコニコ動画涼宮ハルヒの憂鬱MAD4 ニコニコ動画涼宮ハルヒの憂鬱MAD5 ニコニコ動画涼宮ハルヒの憂鬱MAD6 ハルヒ性転換youtube ハルヒ性転換ニコニコ動画 みなみけ動画 ニコニコ動画みなみけMAD1 エヴァMAD1 エヴァMAD2 YouTube新世紀ヱヴァンゲリヲンMAD1 YouTube新世紀ヱヴァンゲリヲンMAD2 YouTube新世紀ヱヴァンゲリヲンMAD3 YouTube新世紀ヱヴァンゲリヲンMAD4 ニコニコ動画新世紀ヱヴァンゲリヲンMAD1 ニコニコ動画新世紀ヱヴァンゲリヲンMAD2 ニコニコ動画新世紀ヱヴァンゲリヲンMAD3 ニコニコ動画新世紀ヱヴァンゲリヲンMAD4 ニコニコ動画新世紀ヱヴァンゲリヲンMAD5 ニコニコ動画とらドラMAD1 ニコニコ動画とらドラMAD2 ニコニコ動画とらドラMAD3 ニコニコ動画とらドラMAD4 ニコニコ動画とらドラMAD5 ニコニコ動画とらドラMAD6 YouTubeとらドラMAD1 YouTubeとらドラMAD2 YouTubeとらドラMAD3 YouTubeとらドラMAD4 アリゾナ老人シリーズ ニコニコ動画電脳コイルMAD YouTubeひぐらしのなく頃にMAD1 YouTubeひぐらしのなく頃にMAD2 YouTubeひぐらしのなく頃にMAD3 YouTubeひぐらしのなく頃にMAD4 YouTubeひぐらしのなく頃にMAD5 YouTubeひぐらしのなく頃にMAD6 ニコニコ動画ひぐらしのなく頃にMAD1 ニコニコ動画ひぐらしのなく頃にMAD2 ニコニコ動画ひぐらしのなく頃にMAD3 ニコニコ動画ひぐらしのなく頃にMAD4 ニコニコ動画ひぐらしのなく頃にMAD5 ニコニコ動画ひぐらしのなく頃にMAD6 ニコニコ動画CLANNADMAD1 ニコニコ動画CLANNADMAD2 ニコニコ動画CLANNADMAD3 ニコニコ動画CLANNADMAD4 ニコニコ動画CLANNADMAD5 ニコニコ動画CLANNADMAD6 ニコニコ動画CLANNADMAD7 ニコニコ動画CLANNADMAD8 ニコニコ動画らき☆すたMAD1 ニコニコ動画らき☆すたMAD2 ニコニコ動画らき☆すたMAD3 ニコニコ動画らき☆すたMAD4 ニコニコ動画いろいろMAD1 ニコニコ動画いろいろMAD2 YouTube電脳コイルMAD1 ニコニコ動画黒執事MAD1 ニコニコ動画かんなぎMAD1 ニコニコ動画かんなぎMAD2 ニコニコ動画ご愁傷さま二宮くんMAD1 ニコニコ動画ご愁傷さま二宮くんMAD2 ニコニコ動画秒速5センチメートルMAD1 ニコニコ動画秒速5センチメートルMAD2 ニコニコ動画秒速5センチメートルMAD3 ニコニコ動画秒速5センチメートルMAD4 ニコニコ動画ほしのこえMAD1 ニコニコ動画ほしのこえMAD2 ニコニコ動画ほしのこえMAD3 ニコニコ動画雲のむこう、約束の場所MAD1 ニコニコ動画雲のむこう、約束の場所MAD2 ニコニコ動画雲のむこう、約束の場所MAD3 ニコニコ動画灼眼のシャナMAD1 ニコニコ動画灼眼のシャナMAD2 ニコニコ動画MAD 管理者、許可者専用 許可者メニュー 練習1 練習2 管理1 管理2 管理3 管理4 sim国 管理21 管理22 動画27 動画26 動画25 動画24 動画23 動画22 動画21 動画01 動画02 ページ ページ一覧 ページ ページ1 ページ2 ページ3 ページ4 ページ5 ページ6 メニューコピー 最新更新ページの覧 新規作成ページ一覧 未作成ページ一覧 fg その他 アニメ、漫画解説 ゲーム攻略 現代暇つぶし用語集 プラグイン紹介 実験22 実験21 ニコニコ動画CLANNADゲームMAD1 ニコニコ動画CLANNADゲームMAD2 ニコニコ動画CLANNADゲームMAD3 ニコニコ動画CLANNADゲームMAD4 ニコニコ動画CLANNADゲームMAD5 ビックベン 編集する。 2024-09-01 04 40 17 (Sun) ここを編集 リンク @wiki @wikiご利用ガイド 他のサービス 無料ホームページ作成 無料ブログ作成 無料掲示板レンタル 2ch型掲示板レンタル お絵かきレンタル ページ 書いた人名簿 ここを編集 ここを編集 2024-09-01 04 40 17 (Sun) 編集する。 2024-09-01 04 40 17 (Sun) - 出典、参考
https://w.atwiki.jp/amusu/pages/307.html
各作品名はあいうえお順で並んでおります。 アニメ映画 作品名 点数(100点満点中) 風の谷のナウシカ 機動戦士Ζガンダム-星を継ぐ者- 75点 機動戦士ΖガンダムII-恋人たち- 67点 機動戦士ΖガンダムIII-星の鼓動は愛- 72点 銀色の髪のアギト 雲のむこう、約束の場所 新世紀エヴァンゲリオン 劇場版 Air / まごころを、君に 新世紀エヴァンゲリオン 劇場版 DEATH (TRUE)2 千と千尋の神隠し 天空の城ラピュタ 時をかける少女 となりのトトロ トップをねらえ! 劇場版 76点 トップをねらえ2! 劇場版 ハウルの動く城 ブレイブ・ストーリー もののけ姫
https://w.atwiki.jp/kiyotaka/pages/21.html
盛夏の始まり ~RED~ いつもより向かい風が強く、正直、この上り坂を歩いて行くのは結構きつかった。 毎年来ているのが、やはりこの山は大きく感じられる。いつ見ても驚くばかりだ。多くの緑も生い茂っている。 ――・・・・・・・疲れた~―― レッドは、朝の日差しの中、トキワシティ郊外にある大きな山を登っていた。その山はカントーの中でも5番目に入る ほどに大きく、ポケモン無しで登るにはかなりきつい。とにかく斜面が急なのだ。 だが、それでもレッドは1人の力で登っていた。 ――もうすぐ夏休みだもんな・・・暑いよなあ・・―― 額から汗がにじみ出ている。あごからも汗がしたたり落ちており、かなり暑かった。 熱さのことを考えていると、ふと、学校に行っているであろう生徒達の事が頭によぎった。この熱さの中、熱気が立ち 込める教室で授業を受けているのだろう。自分が学校に来ていないことを不思議に思いながら。 だが、レッドはそれを頭を振って追い払い、集中して山を登る。 学校は、休むという電話を入れただけでそれ以上の連絡はしてなかった。普通ならオーキド博士はもちろん、グリー ンにまで怒られることだろうが、それに関してはレッドは何も心配をしていない。 なぜなら、 ――グリーンとブルー・・・・・ちゃんと言い訳しといてくれるよな―― と思っているからだ。 何故、彼らが言い訳してくれるかというと、あの2人だけは自分が学校を休んでまで行かなければならない場所を、 絶対に知っているからだ。 だから、学校のみんなが自分の休みを不審に思っていたり、明日、オーキド博士に休んだ理由を聞かれたりすること も無いだろうと思っている。 ただ、グリーンだけは必ず怒ってくるだろうけれども・・・・・ そう思いながら、レッドはひたすら登り続けていた。 一応、ハイキングコースということになっているこの道は、しかしながらかなりの急斜面を持っていた。 いままで気力で登っていたが、それも限界に近づいている。 向かい風は容赦なく自分の身体を押し、どんどん急になっていく坂道は体力を奪う。 そろそろ持ちポケであるプテラを出そうかと、レッドはさっきからずっと考えていた。 ――だけど・・・・・だよなあ・・・―― それでも、出さないのはあるひとつの信念があるから。この山だけは自分の力で登らないといけない。何年も前から 決めていることなのだ。 段々とペースは落ちていったが、レッドはそれでも登る事を止めなかった。 ――そろそろのはずなんだけど・・・・・―― もう少しで自分の目的地に着くはずなのだが、いっこうにその兆候が見えてこない。 1度プテラを外に出して、上空から現在地を見てみようかと頭の隅をよぎった。 と、そこへ・・・ ――あ!―― やっと目的地に通じる目印を見つけ、レッドは安堵の溜息を吐いた。 あそこを曲がれば、もう、すぐに目的地に着く。 レッドは走って、目印の『ここは中腹です』という看板を右に曲がり、草が生え茂っているけもの道を掻き分けていっ た。 そして、いくらか歩いた後、目の前に広がったのは、 ――ふぅ・・・着いた、か・・・・・―― 建物1つ1つがとても小さく見えるトキワシティだった。 今日の目的地は、トキワシティが一望できる場所・・・・自然が作った展望台だった。 この展望台は、ちょうど山からでっぱっているような形で突き出されていて、まるでマンションのベランダのようにトキ ワを見渡す事ができるのだ。 ――いつ来ても凄えなあ・・・―― レッドは、自然の展望台の先端に向かった。 そこから先は急な崖になっており、もし落ちたらすぐに山のふもとまで行けることだろう。 歩いて行く展望台の先には、地面にひっそりと立ててある、高さ1メートルほどの石の十字架がある。黒い十字架。 本当に小さな十字架だった。 その前まで歩いていったレッドは、十字架の前にしゃがみ、それに付いている土埃をとってやった。 「久しぶり・・だな・・」 土埃を全て取ると、レッドはふと、優しい顔で呟いた。その口調はとても穏やかで、それはイエローと喋っている時よ りもさらに優しい声をしていた。 「5年前の今日、始めてお前と会った日なんだよなあ・・・・」 レッドは立ち上がり、周りを見渡した。 後ろには森が、前にはトキワシティが広がっているその景色は、誰が見ても心に残るであろう物だった。 レッドは、この場所が大好きだった。 ひとしきり周りを見ると、レッドは再び十字架の前にしゃがみ、山を登っている時にも背負っていたリュックサックから りんご3個を出し、それを十字架の前に置いた。 続いて、ふもとの花屋で一目見て気に入った花束――7種類の色の花がある――を出し、りんごの隣に置いた。 そして最後に・・・・1枚の封筒を、同じ様に置いた。 それが終わると、レッドは十字架を無言で見つめる。 その見つめる目は穏やかな様でいて、どこか悲しみを含んだ色をしていた。 ――・・・・もう・・・・5年も経つのか・・・・・―― レッドはそう思って、顔を俯けた。 そして思った。まだ忘れていない、と。 この十字架の下に眠っている人物の顔や、印象に残っている言葉、行動、それら全てが頭の中に残っている。忘れ てはいない。 それを確認したレッドは、顔を上げ、十字架に掘ってある名前を見た。 「なあ・・・・・あの時のこと、覚えてるか・・・・?」 誰も答えてくれるはずが無いのに、レッドはどこか虚空を見つめて問い掛けていた。 「あの時・・・・・・・言ってくれた言葉・・・・・・」 十字架のてっぺんに手を乗せ、そのまま喋り続ける。その顔はとても悲しそうな表情・・・ 「『名前には意味がある』ってやつ・・・・・・・俺、まだそれを言ってくれたことを忘れてないんだぜ?」 レッドは急に誇らしげな顔をし、「すげえだろ?」と続けた。 だが、その一瞬後にはまた悲しい表情に戻る。 「だけど・・・さあ・・・・・俺、まだそれの本当の意味がよく分からないんだよ」 その言葉は、弱々しく、それでいて悲しみに溢れていた。 瞳は、もうかなり前から潤んできており、今にも涙がこぼれ落ちそうになっている。 「あの時・・・・俺が守ってやったら、」 地面に数滴の雫が、レッドの瞳から落ちた。声も震え、普段のレッドからは想像もできない姿を、十字架の前でさらけ 出していた。 「その意味を教えて貰えたのになあ・・・」 そう言うと、十字架に掘られている名前を、指を使って緩慢としたスピードでなぞる。 その行動の間にも、瞳からは涙が落ちていた。 そしてなぞり終えると、口からゆっくりと掘られている名前を口にした。 「なあ・・・・レイ」 その言葉に、「RAINBOW」と掘られた十字架は、何も答えてはくれなかった。 「イエロー学園天国」第1部 fin